遠方より修理依頼でUGにお越しいただいた、05yリンカーンナビゲーターの診断です。
長期間放置状態によりバッテリーがあがってしまい、ブースターを繋いでも無理だったので、新品のバッテリーに交換してエンジンを始動。
すると、メーター上にABSやトラクションそしてエアサス系の警告ランプが点灯したままになってしまった…という不具合内容。
警告点灯によりエアサスも機能していなく、車両の姿勢も傾いてきてしまっている状態です。
お預かりして、VCM2を現車に接続しフォード純正診断機であるIDSを起動させて、各ECU診断を行います。
まずは基本となる全DTCの確認、バッテリーが完璧にあがった経緯により、各種ECUに低電圧不具合に伴うCANバスエラー等、多くのDTCが入力されています。
この中でまず攻めるべきポイントは、フェイル状態に陥っているECU。
4X4とNAVとVDM…計3つのECUがフェイル状態に陥り、オプション装備モジュールとして認識されています。（4X4及びエアサスをコントロールするVDMは、もちろん装備されています）
フェイル状態とは、いわゆる全く通信していないECUであり、電源及びCAN等の断線やECU本体不良等の原因によるスリープ状態です。
起動していないECUの存在は、CAN通信による影響で、他のECUにも関連してくるので、最初に処置しておくべき箇所と考えます。
幸い調べてみると、これらのECU電源を供給するヒューズが断線…おそらくブースターケーブルを接続した際に、電圧変動等による負担で断線した可能性が考えられます。
ヒューズ交換後は、装備されている全ECUが起動状態に戻ったので、一旦クリアを実行しDTCの整理。
残る問題は、ABSユニットに残されたDTC「キャリブレーション不具合」による警告点灯だけです。
プログラム処理項目より、ABSユニットのコンフィグレーションを実行し、念のためリプログラミングを実施します。
ABSモジュールからのセンサー出力を確認した後、最終仕上げのIVD初期化シーケンス。
これを実行することにより、ステアリングアングル等のバックアップ学習が復帰し、キャリブレーションが正常に戻ります。
バッテリーあがりは場合によって、ECUにバックアップされている学習等が消去してしまう可能性もあります。
また、今回のようにブースターケーブル接続を行ってもセルを満足に廻せず…という状況は、各種ECUへの電圧変動過大による負担を伴い、最悪ECU内部を損傷する恐れもあります。
例えば家庭のPCが起動中に電源が入ったり切れたり…という状況を想定すれば、そのECUに対する負担は理解できるかと思います。
昨今の車両では、ECUにより多岐に制御されているので、なるべくバッテリーあがりは避けるよう…もしあがってしまった場合は、確実にセルが満足に廻せる電圧供給（ベストはバッテリー交換等）が行えるようにしてください。
UG/yoshida
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