ドライブトレーンの異常警告メッセージが表示され、エンジンの調子が悪い、F10型BMW M5の診断作業です。
ISTAにてディフェクトメモリーを確認するとNo7シリンダーのミスファイアが検知され、現在進行形でNo7シリンダーの失火により燃料噴射が停止されています。
特定の気筒による失火トラブルで最も多い内容は、イグニッションコイルやスパークプラグと言った点火系パーツの不具合が、車種問わず考えられます。
またそういった点火系トラブルの他に、M5に搭載されているホットインサイドレイアウトのS63エンジンはダイレクトインジェクション(直噴エンジン)になるので、燃焼室に直接挿入されているインジェクターの劣化による噴霧不良も事例としては多く存在します。
但しインジェクター交換が必要とされ部品をオーダーする際、例え正規ディーラー車と言えども車体番号だけで装着されているインジェクターの品番特定が不可能なので、ISTAを接続してエンジンに装着されているインジェクターの種別特定の確認が必要となります。
古いNo7シリンダーのインジェクターをツールを使用して抜き取り、新しいインジェクターと組み替えます。
但しインジェクターを変更する際は、そのシリンダーに対して同期処置を行わなければいけません。
各インジェクターの製造誤差により、実際の噴射燃料量がDMEで制御された理論上の燃料噴射量に対し、僅かに外れてしまいます。
過去のポート噴射式と異なり直噴システムでは、その僅かな誤差によってシリンダーバランスに、より影響を受けやすくなります。
その為、各インジェクター製造後にメーカーの測定によって、個々のインジェクターに対する調整値が生成されています。
この調整値は各インジェクターに印字されており、インジェクターの変更を行う際はシリンダーに対する調整値のコーディングが必要となります。
DMEに保存されている既存の調整値を、テスターのサービス機能から変更するシリンダーの対し、新たに使用するインジェクターの噴射量調整値へとリプログラムします。
この処置を行わなければ、インジェクターの燃料噴射調整値にズレが生じているので、ユニット内部での演算処理による噴射量補正が正確に行えず、結果エンジン制御に大きく影響を及ぼすことになります。
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